冬の清冽な空気と澄み渡る青空の下、全国から約150名の少年拳士達が闘いの舞台に集結し、激闘を繰り広げた。「強ければ礼儀も不要」、「勝つためなら手段を選ばない」など、昨今のプロ格闘技の世界には暗い話題が尽きない。それらに真っ向から異を唱えるのが大道塾の理念。それに相応しい試合態度に、見守る関係者たちも惜しみ無い歓声と喝采をおくった。
少年少女たちの試合を総評すると、選手個々の技術の伸長は目ざましく、実力も拮抗状態にあると感じられた。その中でも頭ひとつ抜きん出ている選手に共通するのが、「大人顔負けの稽古」を積んでいるなと感じさせるところだ。もちろん稽古量のことだけでなく、ここでは「稽古の質」を強調したい。なぜなら突き蹴りのスピードと精度、そこから投げに移行するコンビネーションの滑らかさ、そして、最後まで勝負を諦めない「気迫」にそれが顕われていたからだ。
例えば、小学1・2年生(155未満の部)我妻永望選手(塩釜)VS伊藤 望選手(帯広)の決勝戦は、それを如実にあらわしていた。両者、しなるような左中段と突きの応酬。そこで、我妻選手の投げが見事に決まるも、下から懸命に突き放そうと蹴りを放つ伊藤選手の「気迫」。そこには、各道場での指導者や先輩、後輩、仲間たちの真摯な稽古への取り組みが見てとれた。この試合だけでなく、全てのこどもたち、ただのひとりも最後まで試合を諦めなかったことも特筆したい。蹴られても、突かれても、投げられても、転んでも、泣いても…
最後に、当たり前のことではあるが、子供というのは親や目上の者を見て育っていく。真直ぐ育つかどうかはこどもたち本人だけの問題ではない。私たち大人こそ自分を厳しく律し、華やかな現象だけにとらわれず、次代に正しいものを伝えていくようにしなくてはならない。
(文/三津田昭弘) |