今大会のテーマは柔道vs空手!
空道競技において、こんなことを述べたら、暴論だろうか。
しかし、今大会、春・秋連覇を懸ける体力指数306(188センチ・118キロ)の野村幸汰と対した場合、体力指数276以下の選手は、ルール上、組んだら打撃禁止・投げ技と寝技のみOKのルールで闘わねばならないのだ。体力指数276超の選手は野村以外に2名しか出場していないから、事実上、野村の試合は、ほぼすべてが組んでの打撃が禁止のルールとなる(念のために説明しておくと、片方の選手が組んだ時点で〝組んだ状態〟とみなされるので、体力指数差が30以上ある場合、相手に掴まれたら、自分が相手を掴んでいないからといって、打撃を繰り出してはいけない)。
安全面を配慮してのルールとはいえ、昨年柔道全日本選手権(無差別大会)ベスト16の実績をもつ野村に対し、〝組んだらほぼ柔道〟となるこのルールで闘うのはかなり酷だ。
体力指数で野村に30以上劣る選手が野村に勝つ術があるとすれば、それは〝距離を保ったまま、打撃を当てる〟という手段に他ならないだろう。果たして、野村に掴ませず、打撃で翻弄、あるいは一撃で仕留める、牛若丸の如き軽・中量級選手は現れるだろうか? それとも、やはり、野村が怒涛の投げ→寝技で圧勝するのか?
というわけで、今大会のテーマは組み技vs打撃。イメージ的にいえば、柔道vs空手なのだ。
いや、むしろ、これは空道だからこそ成し得るテーマだといってよいだろう。
空道を含め、武道スポーツの国際競技化が進むなかで、武道本来の無差別大会というものは、もはや我が国固有のドメスティックなお祭り的イベントとなりつつある。
ならば、階級別大会とは別の視点で、異種格闘技戦的なアティテュードにロマンを求めてもよいだろう。
清水亮汰や目黒雄太が奇跡を起こすか? それとも、野村が〝強すぎるスーパーヒール〟の立場を確立するのか? 日本のエース的存在である加藤久輝が無着衣総合格闘技の技術研修(11月20日にアメリカのMMA大会「ベラトール」メインイベントでメルヴィン・マヌーフと対戦)のため欠場する今大会だが、興味は尽きない。
野村幸汰
-230クラスで2013年全日本準優勝、2014年世界選手権第3位、2015年全日本優勝と着実に戦績をあげてきた目黒雄太
-240クラスで、昨年世界選手権U19準優勝を遂げ、今春初めて一般カテゴリーにエントリーするや、全日本優勝を果たした川下義人
ムエタイスタイルの新鋭、國枝厚志
清水が欠場した今春の全日本-250クラスを制した加藤智亮
今春の全日本‐260クラス王者・山田壮
ブラジリアン柔術茶帯、寝技での一発逆転勝利が持ち味の佐々木一則
フルコンタクト空手の下地を持ち、飯村健一門下でムエタイスタイルを習得し、パンチャーでもある加藤和徳(左)
270+クラス世界選手権代表、腋の閉まったストレートパンチを放つ辻野浩平
今春の全日本、10月のアジアカップを制して波に乗る今野杏夏